社会主義国家キューバで「日本食堂」を営む日本人、新垣のりこさんにインタビュー



20160509_1609472016年5月5日~10日 キューバ・ハバナ
 
 
 
社会主義国家キューバ。
本来個人による商売は禁止されるはずの社会主義体制ですが、最近はその個人による商売の解禁が徐々に行われ、私営業のレストランなどがキューバには増えてきています。
 
そんな中、日本から遠く離れたカリブ海に位置する島国「キューバ」で日本食レストランを営む日本人の方がいました。
首都ハバナの旧市街に存在する日本食レストラン「日本食堂(NipponShokudou)」を経営する
新垣のりこさんに、今回はインタビューしてきました。
 
堂々とハキハキした口調で、自身の波乱万丈な人生・開業から今までの経緯・キューバに対する想いなどの沢山のことをお話ししていただきましたので記事にまとめました。
 
 
 

 

キューバという国で日本食レストランを始めた経緯

-ではまず、キューバに来たきっかけと日本食堂を始めたきっかけを教えて下さい。
 
元々若い頃にキューバに興味があり、日本でキューバの歌の音楽活動をしていました。
キューバが好きで、当時日本に来ていたキューバ人の方と出会いがあり、結婚し家庭を持つことにもなりました。
その後、子供と共にキューバに移住してきました。これがキューバに来た経緯です。
 
今はこの場所で日本食堂を経営しますが、元々は違う場所でもっと小さくお弁当屋さんを経営していました。
そのお弁当屋を始めたきっかけですが、当時のキューバ人の旦那さんと色々とあり、何かしないと食べていけない状態になりました。そこで日本で経験のあった飲食業をここでもビジネスとして始めようと考えました。キューバには日本食を食べられる場所がなかったのも大きいです。
 
 

日本とキューバでの経営する事の違いと大変さ

-キューバで飲食店を経営する大変さはありますか??
 
まずはキューバ国内にある食材で日本食の味を作りださないといけないという点ですね。
輸入という手もありますが、他の国よりもなかなか手に入れずらいという面もあります。
そこでキューバにある物だけで出来るだけ日本の味に近づけようとはしているんですが、キューバの問題はその種類が少ないことに加えて常にはその食材が手に入らないという点です。
今日はその食材なり調味料を買えても、明日は買えないということが起きます。食材を常に確保できないのが難しいですね。
日本だったら、値段がシーズンによって変わることはあっても手に入らないというのは無いと思います。
他の国でも値は高くなるかもしれませんが、輸入品を手に入れることが可能なはずです。
だから必然的にシーズンによって作れるメニューが変わってきますね。
 
 
-社会主義という点で、海外で働くことの大変さはありますか??
 
従業員を雇う場合ですが、資本主義の社会で働いたことのない人たちが資本主義のオーナーの下で働くとなると、働き方や感覚が全く違うので業務内容うんぬんの前に働き方を指導しないといけません。それが非常に難しいです。
 
-そもそもキューバの制度で日本人が個人営業を始めるのは容易ではないんじゃないでしょうか?
 
誰でもとは言いませんが、永住権を持っていれば簡単に始めることが可能です。正規の手続きを取ればその許可やライセンスも取得できます。
ただ、永住権を取るためには結婚して移住するというのがほとんどで、その他の方法もありますが非常に難しいです。
また結婚したからといってすぐ永住権をもらえるわけではなく、申請をしてその許可を待たなければなりません。
キューバ人との子供がいるとその許可が降りやすいという話もあり、私の場合は4ヵ月かかりましたが、同じ境遇の友人は2か月でした。だけど、子供はいなく国際結婚の夫婦という方は2年経っても永住権をもらえないという場合もあります。ただ何が原因かは分からないんですが。。。
 
 

メリットとデメリット

-キューバでビジネスを始めるメリットとデメリットはありますか??
 
国交正常化以降、キューバを訪れる観光客が激増しているように今はキューバブームだと思います。
また個人営業も以前はだめだったけど、今は可能になっています。
その外国人観光客相手の仕事がしやすくなった状態、だけれど、ビジネスとしてはすき間だらけだと思うんです。キューバは不足していることがたくさんあるので。
私の日本食レストランもキューバのハバナ市内で初めてだと思います。
なので、ビジネスチャンスはまだまだいっぱいあると思います。
 
一方、デメリットとして、他の国よりも物資を調達するのが難しいことがあります。
必要な物資を常にキープしておけないので、同じ商品を売り続けるという商売だと時期やタイミングによっては難しくなる可能性がある。なのでそこを補えるように考えていく必要が出てきます。
 
 
-生活面ではどうですか??
 
観光客がキューバに来た時はカサやホテルに泊まると思うので、不便さを感じることはあまりないかもしれませんが、現地で暮らそうと思うと問題がたくさんあります。
一番は水ですね。水が地域によって不足したりします。
水は供給されるのですが、それが1日ごとだったり場所によっては3日待たなきゃいけなかったりします。
また配管工事を何年もかけて工事していたりするので、突然水が止まってしまうこともありますね。
なので水が必要な仕事をする場合はその点も考慮しなければいけなくなりますね。
 
またネット環境も悪い点があります。国交正常化以降かなり改善はされてきたんですが、まだまだ不便ですね。カードを購入して電波の飛んでいる場所まで行かなければならないので。
それ以外にも不足していることがたくさんありますが、でも生活していると慣れてくるので問題はないです。それが普通みたいな(笑)
現地の環境に合わせて感覚的に慣れてくる。それがキューバです。(笑)
 
 

今後のキューバ

-今後キューバはどうなっていくと思いますか?
 
国交正常化以降、観光客が増え資本主義体制も少し導入されてきているので、みんなはキューバが変わってしまうかもと騒いでいますが、私はそんなにいきなりは変わらないと思います。
国民がすぐには対応できないと思うし、配給制度も残っています。他の国より貧富の差は小さいですが、個人営業など資本主義を取り入れ始めたことによって貧富の差が表れ始めているので、政府も急激に資本寄りにはできないと思う。
徐々にじゃないと難しい。ただ、貧富の差は少しずつ広がっていく可能性があるので、そこは政府が歯止めをかけて社会主義寄りに戻していくと思います。でないと国民が生きていけないですよ。
 
 

今の日本について

-今の日本について何か思うことはありますか?
 
やっぱり日本は素晴らしいです。全ての事においてホントに便利にできているし、考えられて作られている。手が汚れないようにできているとか。
ただ、私がキューバで不便であるけれど生活をしていると、日本はやりすぎだと感じてしまいます。そこまでしなくてもいいんじゃないかと思うこともあります。
ただ、世界に誇れるジャパニーズクオリティがあるのは確かで、素晴らしいと思います。
しかし、日本とキューバの国民性は全然違っていて、キューバで生活していると世間体を気にしなくて済んでとても楽です。
その点日本は窮屈。例えば私は40歳で金髪ですが(笑)日本だとこんなことは出来ない。キューバなら自分の好きなようにしていいし、生きたいように生きていける。
いいのか悪いのかは置いておいて、それが性に合っています。だから私はキューバにいます。
 
 

今の若者に向けてメッセージ

−最後に、僕らの世代のような若者にメッセージをお願いします。
 
今は日本を離れて長いので、ニュースなんかも見ないので最近の日本の若者は知らないですが、
もし人生に挫折したら私の所に来てください!(笑)
私はかなり大変な人生を歩んで苦労してきたと思うので、私の人生を聞けば励まされて帰ることができると思います(笑)悩みなんか吹っ飛びますよ。笑

 

 

【お話しを終えて】
当初はインタビューなんてするつもりはありませんでしたが、のりこさんの波乱万丈な人生を聞いていたら、ぜひ色々と意見を聞いてみたくなったのでインタビューとしてお話しを聞かせていただきました。
 
ここでは割愛していますが、色々な出来事があり本当に苦労してきているようでしたが、逆にそれが今ののりこさんを形成しているようでした。
力強くお話しをしてくださり、上記メッセージのようにこれから大変なことがあっても大したことないと思えそうです(笑)
 
もし今後キューバへ行く人がいたら、ぜひのりこさんの経営する「日本食堂」に行くことをお勧めします!
もちろんそこでは、おいしい唐揚げ定食やかつ丼、とんかつ、しょうが焼き、照り焼き丼などなどが食べられるので、ぜひ行ってみてください。
あと、物資が不足するキューバなので、調味料やプリンター専用の詰め替え用インク(Epson 405A カートリッジではないIC69 黒インク)などを持っていくと非常に喜ばれると思います。もちろんお礼は出すそうです。
 
個人的には特殊な国だと思っているキューバですが、現地でリアルに過ごしている方に話を聞くことができ、よりリアルなキューバの姿を知る機会にもなりました。
国や場所は関係ない。苦難があっても自分のやりたいことをやりたいようにやる。
そんなことをのりこさんから教わった気がします。
 
どうもありがとうございました!
 
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人生に悩んでいる方

コーチングというものに出会い、コーチングを通して自分自身を大きく理解し、たくさんの経験や悩みや葛藤などを経て、ここにたどり着くまでの事を赤裸々に綴っています。

僕のこれまでの経験や考えてきたことを伝えられたら嬉しく思います。
少し長いですが、お楽しみいただけると嬉しいです。


8 件のコメント

  • すごく、素敵なブログありがとうございます。
    キューバとここの食堂に行ってきたものですが、キューバに戻りたくて寂しいところこのブログに出会えて嬉しく思っています。
    キューバ最高です。
    また、この食堂伺うときは、調味料持っていきます!

    • みゆきさん
      コメントありがとうございます!
      僕もキューバ行ってキューバが好きになったので、また行きたいとうずうずしているところです。
      ぜひのりこさんのためにも!
      今後もこのブログをよろしくお願いします。

  • はじめまして。

    来月8月26日から9月5日メキシコ・キューバに旅行にいくため、ネットでいろいろ調べてて伊藤さんのこのブログに辿り着きました。

    私は今中国で個人経営のレストランバーをやっているのですが、テレビで今のキューバを知り、キューバで日本料理店がやりたいと思っていて、是非新垣さんのお店にもお邪魔させていただきたいです。

    もし伊藤さんが新垣さんの連絡先をご存じであれば、教えていただけませんでしょうか?プリンタインクや調味料必要なものが持っていけますし。

    貴重な情報をいただきありがとうございました。伊藤さんの記事は、キューバのこの記事しか読んでませんが、僕にとってはすごく貴重な情報です。

    私は自分の商売を七年やっていますが、「自分の好きなことをやって、それが人を幸せにする」という考え方すごく大切だと思っています。伊藤さんが好きな旅をして、それを記事にして、その記事を読ませてもらった私を勇気付けてくれました。伊藤さんのブログは自己満足なんかじゃないですよ。

    実際大使館に2回メール送ったのですが、返信はなくて、もちろんキューバに知り合いがいるはずもなく、このままじゃただの観光旅行になってしまう、と焦っていたんです。ありがとうございます。

    楽しい旅をして、その経験が誰かの役に立つかも、という思いで記事にしていってください。

    室谷

  • 来年キューバ、コンガ修行の旅を考えている阿部と申します。ブログ大変参考になりました。必ず日本食堂に足を運ばせていただきます。室谷様、偶然ですが私も日本人でありながら中国大連で物流に携わっております。(笑)

    • 阿部さん、コメントありがとうございます!
      コンガとはまたコアなことに挑戦されていますね!
      ぜひぜひ日本食堂に足を運んでみてください。のりこさんにどうぞよろしくお伝え下さい。

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