五輪・新国立の工事で新卒23才過労自殺・・・。元同業者として思うこと。

 
 
元同業者として黙っとけない話が飛び込んできました。
 
東京五輪に向けて建設が進んでいる「新国立競技場」の工事で、超長時間残業が原因で23歳の男性が過労自殺したそうです。
 

新国立競技場の建設工事に関わっていた23歳の新卒男性が今年3月に失踪し、長野県で遺体で見つかった。警察などの調査で、自殺と判断された。「自殺は仕事が原因」として、両親は上野労働基準監督署に労災認定を申請、代理人の弁護士が7月20日に厚労省で記者会見した。
男性は、大学卒業直後の2016年4月、都内の建設会社に就職し、現場監督をしていた。
2016年12月17日、新国立競技場地盤改良工事に従事することになって以降、極度の長時間労働、深夜勤務、徹夜が続いた。自殺直前の1カ月で、徹夜が3回もあり、夜22時以前に仕事が終わったのは5日だけだったという。
川人弁護士が、会社・元請けから提供された資料に基づいて分析した結果、自殺直前の1カ月の時間外労働は211時間56分。2カ月前は143時間32分だった。
この勤務時間は、セキュリティ記録やパソコンの記録、通勤の記録などから割り出したものだという。これは、会社の労使協定(36協定)を、はるかに超過していた。
男性は、あまりにも過労状態だったので、車通勤を辞めた。2月半ばからは、片道1時間かけて電車で通うようになった。
起床は午前4時半、帰宅は0時半〜午前1時。現場の仮設事務所には、仮眠室は存在しなかった。
同居していた両親によると、起こそうとしても、なかなか起きられない状態だった。亡くなる1カ月前には、1日平均2〜3時間程度の睡眠しか確保できていなかったはずだという。
引用:BuzzFeedNEWS

 
引用元はこちらの記事です。
五輪・新国立競技場の工事で時間外労働212時間 新卒23歳が失踪、過労自殺
 
 
新卒でまだ23歳。
人生これからって時なはずなのに、、、本当に悲しいニュースでした。
 
 
この件の話は、工事現場で工事を進める現場監督の人の話でした。
僕も以前の職場は全く同じ業界の全く同じ職種だったので、今回の内容の詳細は聞かなくともリアルに分かります。
 
ニュースの内容によると自殺の原因となるのは過労。つまり長時間に及ぶ残業が原因だということです。
その時間、月に約212時間。
1日に2〜3時間しか寝れない日々が続いていたそうです。
 
 
一般的な人からすると、いまいちピンっと来ない、いやそもそも話盛ってるでしょ、って思う人がいるかもしれませんが、
この業界だと大いにありえる数字で、実際に僕もこれと同レベルの生活を送ったことがあるので分かります。
どんな生活、どんな勤務状況だったのかも細かく分かります。
 
僕の過去の場合、朝7時の朝礼開始に合わせて6時半頃に出勤、に合わせて起床。
帰る時間も夜11頃に帰れたら早い、12時で普通、1時でよくある、2時で限界。
 
そこから通勤・飯・シャワーを除いた時間が睡眠時間となるわけです。
どれくらいか分かりますよね?
4時間睡眠が6日間続いた時がありました。
その前後も5〜6時間程度。
彼の場合それよりも短かったということです。
 
もちろん年中ずーっとというわけではないです。
現場によってはもっとゆったりとした場所ももちろんあります。定時に帰る日々が続く時もあります。
だけど、睡眠時間が十分に取れない日々が多々あり、土曜祝日は出勤がほとんど。
日曜日は休みだけれど、工事の日程によってはそれすらも休めない時があります。
 
その時は新卒ではなかったものの、職場内で1番の若手。
雑務も含め膨大な量の仕事がありました。
1人だけ仕事が多いというわけではなく、みんなそれぞれのレベルに合わせて仕事量を抱えていたので、誰かに文句を言うこともなくとにかくやるしかない。
 
亡くなった彼も、まだ1年目の最若手ということで、雑務も多かっただろうし任されてた改良工事も責任もってやろうとしていたんだと思います。
まだ経験も浅く要領を得ていたわけでもないだろうから、自分で考えながら時間を掛けてでも任された仕事に責任感を感じて取り組んでいたんだと思います。
そのギリギリの状態で過ごしていた糸が突然切れた。
それで今回のこのような結果になってしまったんだと思います。
 
 
業界の事情を多少知っていたので、新国立競技場の設計段階で話が二転三転していた時点で、
ここの現場を任される人たちの苦労は想像できました。
工事の開始が遅れた分だけ大変なことになる。
 
ただこんなに早く、しかも亡くなってしまう人が出てくるとは思いませんでした。
もう少し周りの先輩上司たちが気を配ってあげられなかったのか。
いくら周りの人も忙しかったとしても、1年目にそこまで心理的負荷を感じさせる業務体制がおかしいし、
現場がそんな状態なら会社がもっとフォローを入れるべき。
国家プロジェクトなら国がもっとフォローを入れるべき。
そもそも工期が遅れているのは彼のせいでもないし、現場や会社のせいでもなく、国でしょう。
 
助けるタイミングはどこかに絶対あったはずなのに。
本当にこんな結果になってしまっているのが、残念で仕方がないです。
 
 
 
 

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日本の残業文化

 
最近では「残業」や「労働時間」など何かと騒がれていますが、正直この業界では残業は無くならないと思います。
 
工事の始まりは誰かがこの建物を作りたいと発注をするわけで、それを建設会社が受注して建物ないし建築物を作ってその対価としてお金を得ます。
その発注したお客さんは、より早く・より安くを求めます。
当然ですよね。
早く作ってもらって早くその建物を使って利益に繋げたいし、安く作ってもらったほうがその分お金が残るし。
そしてお客さんは建設会社に競争をさせます。
より早くより安く出来る所に仕事を頼むと。
そうすると、建設会社はより早くできる日程で、より安く作る提案をします。
お客さんもそれくらいの時間でできるんでしょ?と当たり前に思ってきます。
 
その状態で工事が始まると、大変なのは現場で働く人です。
工事の日程は短い、お客さんからもらう金額は決まったのでその中から利益を出さないといけない。
特に工事期間が限られると、今回みたいに毎日残業をして段取りをしないと工事が遅れてしまうということになるので、みんな夜遅くまで働くことになります。そして残業代の支払いにも限界があるのでサービス残業という名前でお金が支払われません。
 
工事を受注する時はこれまでの実績を元に、これだけの日程で出来ます。と提案しますが、
その実績はこれまで多くの人が毎日残業をしてなんとか作ってきた実例なので、
それを前提にすると残業は当然必要になってきます。
そしてその残業の時間というのは、サービス残業も当然のように含んでいます。
労使協定(36協定)があるので、残業の申請は規定内になっている場合がほとんどですが、実際はサービス残業が何十時間とあります。
会社が規定内と言ってもそれはただの申請上の話です。
 
なのでいくら世間が残業は悪!と叫んでも、会社が残業時間を減らそう!と言っても実際に残業が無くなることはないし、
嘘をついてでも残業するという姿勢は変わりません。
 
電通の件があってから元同僚に会う機会があったので、それから何か変わった?って聞きましたが、案の定何も変わらずです。
 
 
この状況を変えることはなかなか簡単ではないと思います。
まずお客さんが理解しないことには始まりません。
「これまでこれだけの短時間で造ってこれましたが、実はもっと時間が必要なんです。」
ということに理解をしてもらわないと受注の時点でどうしようもなくなってしまいます。
 
それで少しずつ変わっていったとしても、ある程度は残業してでも工事に取り組んでいかないとこの業界自体が衰退していってしまうことに繋がりかねないので、ある程度時間を割くことは必要だとも思います。
仕事も全然終わってないのに計画も無しに無責任に帰りますっていうのはどうかと思います。
 
ただ。
ただ今回の件を考えると、ここまで来ると,この「残業」は間違いなく「悪」でしかない。度を過ぎている。
しかも今回の工事のお客さんは「国家」
人ひとりの命を奪うまで働かなくてはいけない状況をつくっているのは国じゃないのか。
いくらオリンピックだからといって人が亡くなってしまう状況になるくらいなら、そんなの初めから候補に名乗り出るべきじゃなかったはず。
 
なんで相談しなかったのか、なぜ逃げなかったのか。
そんな声も聞こえてきますが、悪いのは死という選択をした彼ではなく、そんな選択肢さえ与えない心理的状況に追い込んだ日本の残業文化。
 
 
この記事に出てくる弁護士も言います。
 

「人間の生理的限界をはるかに超えた、常軌を逸した時間外労働だ。男性が死亡した後も、業者や関係機関が痛苦な反省の上に改善措置をとっているとは言いがたい」
 
「使用業者はもとより、元請け、発注者、さらに東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会、東京都、政府関係機関は、この労働者の深刻な実態を直視すべきだ」
 
「国家的な事業だからといって、労働者のいのちと健康が犠牲になることは、断じてあってはならない」

 
ホントにその通りだと思います。
国や全ての会社がこの事にもっと目を向けるべきなんだと思う。
日本の残業文化が人の命を奪う。
絶対にあってはならないこと。
 
 
 
この業界を去った僕が言えることではないのかもしれないけど、
僕は今でも建築が好きだし、工事現場とか気になっちゃうタチです。元同僚とも今でも関わりがあります。
だから、この業界が少しでもいい方向に変わっていくことを願うし、このまま無事オリンピックが開催できるようになったとしても、こういった人の犠牲があった上で成りたっていることを僕らは忘れちゃだめなんだと思う。
 
 
 
 
 
最後になりましたが、亡くなった方のご冥福をお祈りします。
 


人生に悩んでいる方

コーチングというものに出会い、コーチングを通して自分自身を大きく理解し、たくさんの経験や悩みや葛藤などを経て、ここにたどり着くまでの事を赤裸々に綴っています。

僕のこれまでの経験や考えてきたことを伝えられたら嬉しく思います。
少し長いですが、お楽しみいただけると嬉しいです。


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